精漿(せいしょう)に注目か⁈ ②
前回は
健康状態が精液の質に反映することがわかった、と書きました。
そうなると当然、睡眠不足や食事も精液に関係していて不思議ではありませんよね。
よく患者さんから、
「夫には亜鉛のサプリメントを飲ませています!」と聞きます。
確かに何年も前から男性不妊には亜鉛というイメージですね。
実際、亜鉛は精子の形成やテストステロンの合成に欠かせないミネラルで、精液中にも多く含まれています。
精液中の亜鉛濃度を調べてみると、
亜鉛が多いほど精子の数が多い傾向にあることがわかっています。
前回でも書いた精液の成分分析を行う企業ダンテさんの研究によると
魚よりも肉の方が亜鉛を多く含んでいて、
アンケートでも魚より肉をよく食べると答えた人の方が精液中の亜鉛濃度が高いことがわかっています。
「亜鉛濃度が高いほど精子の数が多い」のですから、
肉をよく食べてる人の方が精子の数が高い傾向にあるということですね。
とはいえ
肉中心の人の亜鉛濃度が平均14.1mg/dl
魚多めの人の平均が11.4mg/dl
これでどれだけ精子の数に違いがでるのか気になりますね。
念のため言いますが
「よし、じゃあ今日からウチの食事は肉肉肉だっ!」
となり、ダンナさんの健康を害してしまうのでは本末転倒ですよ。
決して極端に受けとってはいけません^_^
もう一つ、健康状態に欠かせない要因として「睡眠」があります。
実は睡眠時間も精液成分と関係していると、同研究からわかったようです。
睡眠時間が
7〜9時間の人は精液中の8-OHdG濃度が15.0ng/mlに対し、3〜5時間の人は20.9ng/mlと、大きく差がでています。
8-OHdGはDNAの酸化を見る物質ですので、
この値が高いということは精液の酸化が進んでいるということ。精液の質が悪いってことです。
ちなみに家畜の精液を保存するときは抗酸化物質を加えて、酸化を予防します。
今回ダンテ取締役であり
順天堂大学大学院医学系研究科泌尿器外科の堀江教授は
「食生活や睡眠時間などの生活習慣は、精液成分に大きく影響する可能性がある」
と、まとめています。
おそらく読んでいただいた方からは、
「肉中心とか魚多めとか、ザックリし過ぎやしないか⁈」
「睡眠の質は関係あるの?」
など、疑問がたくさん出てくるのはごもっとも。
ですが、まだこういった研究は始まったばかりで、
時間をかけてデータを集積しなければいけません。
今回ダンテさんの研究で
今まで精子しか注目されていなかったのが、実は精液も大事だということがわかり、
その精液は健康状態、食事や睡眠など生活習慣の影響を受けていることがわかりました。
患者さん達には大事な情報です。
さらに研究を続けて、また続報を発信して欲しいですね^_^