鍼灸治療を理解いただくために、簡単に東洋医学と西洋医学の違いについてご説明します。
西洋医学では、身体をそれぞれの部品(臓器や組織)が集合した精密機械と考え、血液検査やMRIなど検査データで部品に異常があった場合に病気と見なします。
一方、東洋医学では「気」と「血」のバランスが乱れることで病気になると考えます。このため、精神と肉体を一体としてとらえる「心身一如」をコンセプトとして診断・治療します。
鍼灸治療は、はりとお灸で身体にある経穴(ツボ)を刺激して、気血の流れをスムーズにし、心身のバランスを整えます。また、人が本来もっている自然治癒力を高め、病気を未然に防ぐ予防医学でもあります。中国から日本に伝わった鍼灸医学は1500年の長い年月をかけ、日本の風土や日本人の性格・体格に合うように日本独自の進化を遂げました。刺さない鍼や細い鍼、心地よいお灸、身体に負担の少ない優しい刺激。それが日本鍼灸の醍醐味(だいごみ)であると考えています。
今や鍼灸はアジアだけではなく、ヨーロッパやアメリカで盛んに行われています。 さらにNIH(アメリカ国立衛生研究所)など世界中の医療機関でも鍼灸のメカニズムがさかんに研究されており、現代の鍼灸は科学的根拠のある医療としても注目されてきています。
わかりやすいように現代医学的に鍼灸の効果を説明してみます。
鍼灸の特徴とは何か。西洋医学にも「血」はあるので、鍼灸医学の特徴とは「気」の概念があることかと思います。「気」という言葉を使うと、怪しく感じる方が多いかもしれません。しかし、「元気な人」「やる気がある」「気が合う」等々、日本人の生活には「気」という言葉が溢れています。東洋医学では、「気」が足りなかったり、巡りが悪く滞ったり、「気」のバランスの乱れた状態が「病気」だと考えます。
鍼灸師は「四診」と呼ばれる東洋医学独自の診断法で、「気」を乱した原因を探します。抱えている症状だけではなく、悩みや不安を汲み取り、性格や体質、生活環境を考慮して治療方針を決めます。
場の雰囲気や相手のして欲しいことを察するという意味で使われる「空気を読む」。鍼灸が「気の医学」といわれるからには、私も空気の読める鍼灸師でありたいものです。