食生活と不妊症

名古屋は久々の雨でしたが、涼しくなるのでたまには悪くないですね。

 

さっそく本題に。
前回は、ファーストフードなど加工された肉の食べ過ぎは精子の正常形態率を下げる原因になるというハーバード大学の研究結果を書きました。
今回の研究においていったい何が精子の質を悪くさせる原因となったのか、そのカギはどうやら食物に含まれる脂質にあるようです。

ということで、今回も不妊症と食事についてのお話し。

 

家庭科の授業で習ったと思いますが、人間に必要な3大栄養素はタンパク質、炭水化物、脂質と言われるように、「脂質」は生きていく上で重要なものです。食物中に存在する脂質は主に4種類の脂肪酸で構成されています。

一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸。

ざっくり分けて「良い脂肪」は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸で健康にとても良いとされています。「摂ってもいいけど、摂りすぎは良くない脂肪」は飽和脂肪酸です。そして、「悪い脂肪」であるトランス脂肪酸は健康にも妊娠にも悪影響をもたらすといわれます。

 
「良い脂肪」の不飽和脂肪酸(一価も多価も)
不飽和脂肪酸はHDL(善玉コレステロール)の値に影響を及ぼさず、LDL(悪玉コレステロール)の値を下げます。血液中に血栓ができるのを防ぎ、心臓発作や脳卒中の予防にもなります。
また、生殖にも重要な役割を果たし、体内の血糖値や炎症などを身体がコントロールする際に不飽和脂肪酸が助けてくれるので、妊娠しやすい身体づくりにも良い影響を及ぼす可能性があります

多価不飽和脂肪酸の中でも特に良いとされるオメガ3脂肪酸は、鮭やイワシ、マグロなどの冷水魚やクルミ、あまに油などに多く含まれます。このオメガ3脂肪酸は細胞膜を構成したり、心臓病や脳卒中、ある種の癌や慢性疾患を予防すると言われ、また赤ちゃんの脳の発達にも重要な役割を果たすといわれています。
このオメガ3脂肪酸は人間の体内で作ることができないので、食事から摂取するしかありません。

一価不飽和脂肪酸は主にオリーブオイルやキャノーラ油など植物性油、ナッツ類、種子、アボカドなどに含まれます。また、鮭やニシンなど脂肪分が多い魚にも多く含まれます。

 

 
「摂りすぎは良くない脂肪」の飽和脂肪酸
こちらはLDL(悪玉コレステロール)と密接な関係があり、健康を手助けしてくれるものではありません。食べ過ぎはLDLが血管中に増え、動脈を詰まらせ、梗塞を引き起こす原因となります。主に肉の赤身や動物性脂肪、ヤシ油やココナッツオイルなどの植物性油に含まれます。無調整の牛乳や脂肪分をそのまま含む乳製品も飽和脂肪酸を含む主な食物です。

ちなみに「乳製品」については不妊でお悩みの患者さんにも時々聞かれます。

今回のブログは、前回のブログで書いた研究と同じハーバード大の先生達の研究結果をまとめた本を、かいつまんで書いていますが、乳製品については興味深い研究結果が出ておりました。
それは脂肪分無調整の牛乳やヨーグルト、チーズなどは排卵障害の不妊症リスクを低減し、反対に低脂肪の牛乳やヨーグルトの方がリスクを高めるという結果です。

意外!と思ったかたも多いはずです、私もてっきり低脂肪のほうが良いのかと思っていました。
その理由は端的に書きますが、牛乳から脂肪分を取り除く過程で必要な成分も一緒に取り除かれ、結果的に低脂肪の牛乳には男性ホルモンが多く含まれるので、卵胞の成熟や排卵障害のリスクが高くなると考えられているそうです。

 

ここまでを簡単にまとめると

・良い脂質である不飽和脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸を摂取しましょう。妊娠の確率も高める可能性があります。

・赤身の肉など飽和脂肪酸は、ほどほどに控えると良いでしょう。

低脂肪よりも脂肪分無調整の牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品の方が排卵障害のリスクを低減できます。

※すべての食品や栄養素に共通して言えることですが、大事なのはバランスよく、ほどほどに摂ることです。極端に食べ過ぎたり、控えたりする必要はありません。

 

長くなってきたので、「悪い脂肪」のトランス脂肪酸については次回にします。
果たしてこの「食事と不妊」に、皆さん興味があるのでしょうか!?
そんな一抹の不安を抱えながら書いていますが、あと数回はこのネタで引っ張る予定です。
いや、そもそもこのブログを読まれている方がどれだけいるのか(笑)

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