視る子は育つ

親、子、孫の親子3代で来てくれる患者さんがおられます。
お孫さんはまだ2歳ながら立派な患者さんです。そんな小さなうちから鍼受けるの!?と驚かれるかもしれませんが、「小児鍼」といって大人とは違い刺さない鍼を使って、皮膚を優しくこするだけの治療です。詳しくはホームページを見て頂けたらと思います。

この2歳児の女の子ですが、今どき珍しいくらい純粋で可愛い。当然、おじいさんやお父さんも可愛くてしかたない様子で、まさに「眼に入れても痛くない」状態。私もデレッデレ。

さて、可愛いのは置いといて・・・
彼女の観察力は目を見張るものがあり、両親や私が何をするにもジーっとよく視ています。
母親の治療中は、隣にいて視ていることが多いのですが、私が手を洗うとジーっと視て、私が脈を見たり、鍼をしているときもしっかりチェックしているご様子。
そして最近の口癖は「先生、何してる?」なので、私も「今、お灸に火つけてるよ」「今、お茶いれてるよ」と、そんな会話が続きます。
私が母親の背中をさすっていると、その子も一緒になって触ろうとしますし、私の手を洗っているところを視ると、帰った後で私と同じように洗うらしいのです。そんな風に全てにおいて、人のすることを真似るのです。

 

そんな彼女を見ていて、ふと思い出したのが「ミラーニューロン」。
ミラーニューロン(Mirror neuron)とは、人間やサルがある行動を起こすときに発火する運動ニューロンのうち、他人の行動を見るだけで発火するニューロンのことです。
20年ほど前に発見されたミラーニューロンは、他者の行動やその意図を理解する手助けになると考えられている神経細胞です。

 

例えば、自分が手を洗うときと、他人が同じ行動するのをただ見ているときのどちらの場合にも、ミラーニューロンは活動電位を発生しています。
夫婦などが長年一緒に暮らしていると、顔かたちが似てくることがありますが、これは夫婦同士がお互いにミラーニューロンのレベルで模倣(他のものを真似すること)し合っているからだと言われています。
この脳内で模倣すると、大脳辺縁系の感情中枢に信号を送り、「共感」が生まれるのです。

 

では、ミラーニューロンは、どうやって誕生したのか。
赤ちゃんが親と模倣し合う相互作用によって形成されると考えられています。
赤ちゃんが笑えば、それに応えて親が笑い、親が笑えば、それに応えて赤ちゃんも笑う。
それを繰り返すことで、赤ちゃんの脳中に親の笑顔を写しだすミラーニューロンが生まれるそうです。研究によると、生後わずか数時間しか経っていない赤ちゃんでも、母親の表情を真似しようとすることがわかっています。
子供にとって最も身近な人である両親との接触から始まり、さまざまな他人と接して、ミラーニューロンによる模倣をし合うことによって「共感」を覚え、集団の中で生活することや道徳が身につくと考えられています。
この人間に生まれつき備わったミラーニューロンシステムが、他人の行動を理解し、他人の感情と共感する土台になっています。
相手の気持ちを理解できる人間に育つには、幼少期に人と接触し、ミラーニューロンを活発に発火させることが大事だと言えそうです。
親は子供の笑顔に笑顔で応え、痛みには苦痛の表情で対応し、親子で面と向かって食事をする。また、音楽に合わせて踊ったり、声を合わせて歌ったりすることで、しっかりと身体で覚えることができ、より他者に共感できる敏感な身体をつくることができるようです。

 
「学ぶ」という言葉は「まねる」が由来となっていますが、2歳児の彼女は、今まさに世の中の全てに興味があり、人がやること何でも観察し、それを脳内で繰り返し模倣することで、ものすごいスピードで成長していきます。
さらに、ここのご家庭が素晴らしいのは、「これ何?」「何してる?」と問われると、面倒に思わずに(思っていたとしても)、必ず一つ一つ答えていることです。それが、2歳児にして、ボキャブラリーが豊富で、理解力がある理由に違いない!と私は勝手に分析しています。

 

そんな私もすっかり、この子供の笑顔によって、笑顔が引き出されてしまいます。
いつからでしょう、子供を可愛いと思うようになったのは。
数年前までは「姪っ子が可愛くてさ~」と写メをみせてくる同級生を勘弁してくれと鼻で笑っていましたが、今はとてもじゃないが言えません。
私なんて他人の子供が可愛くてしかたないのですから(笑)

 

 

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