小児鍼④

前回からだいぶサボっていたら、あっという間にセプテンバー。

 
今回も小児鍼について書きますが、その前に…

 

先月から同業者内では、このニュースで騒がれています。
昨日はテレビでもやっていましたので、知っている方もおられるでしょうか。

 

生後4か月の赤ちゃんが、整体の施術を受け死亡した問題
今年の6月、大阪のNPO(民間非営利団体)法人の代表である女性から、
首を捻ったり、もんだりされた後、男児の呼吸が止まり、病院に緊急搬送されたものの、6日後に亡くなってしまいました。
死因は脳に酸素が行きわたらなくなる低酸素脳症による多臓器不全。
このNPO法人では、昨年にも施術を受けた子どもが死亡していますが、
2件とも整体施術と死亡との因果関係は認めていないとか。

なんともショッキングであり、許せん事件です。
施術中の写真が公開されていましたが
ありえない角度に首が曲げられていて、思わず目を背けたくなります。

 

1時間の施術中、赤ちゃんは泣きっぱなしだったという記述もありました。
その整体について詳しく知りませんが、患児が大泣きしてしまうような施術が心身に良いはずがない、と私は思います。
当然、私がして欲しいスキンシップ、身体接触は…
断じてこんなものではない!!

以前にも書きましたが、
国家資格のない、無資格者による整体やマッサージなどの事故が増えています
老若男女限らず、皆さんお気を付け下さい。

 

 

では、“小児鍼”はどんな治療なのか。
ハリなんてさらに痛くて、子供は泣きわめくのではないか!?
治療時間は1時間もかかるの!?
いろいろと疑問があると思います。

 

何度も言いますが、基本的には鍼は刺しません
接触鍼と呼ばれ、ローラーのような鍼、イチョウの形をした鍼、棒状の鍼などを使い
皮膚に軽く、優しく接触させるだけです。

 

子供は待合のソファで母親に抱っこされたまま治療を受けたり、
当院には自らベッドに寝転んで「ハリちて欲しいの~」とおねだりしてくるカワイイ患者さんもいます(笑)

 

教科書には
小児鍼のコツは絶対に痛がらせない・泣かさないことが大切である」と書かれています。子供が小児鍼は痛くなく、気持ち良いとわかれば、恐怖心はなくなりリラックスします。

 

治療を隣で見ているお母さん方は、みなさん驚きます。
「えっ!?こんなんでいいんですか?」と。
こんなんでとは、こんなチョンチョンと撫でるだけで効果あるの!?という意味です。

さらに治療時間の短さにも驚かれます。「もう終わり!?」
だいたい約5分で、長くても10分以内には終わります。

「いやいや、先生。私は寝てくれなくて本当に困っているんですよ!主人が明日も仕事なんだから早く寝かしつけてくれよって言うし!
それなのに、こんなチョンチョンやって、さらに数分で終わりって、そんなんで寝るようになったら苦労しないわよ!」
って、お母さん怒り出さないかなぁと私は内心ビビッていたりして(笑)

そのお気持ちはわかりますが、それで効きます。
子供は大人と違い、身体の反応が良いので、とっても軽い刺激でちゃんと効果が出ます。
刺激過多になると、逆に症状は悪化し、ダルくなったり、下痢になったり、場合によっては発熱することもあります
大人の治療でも一緒ですが、鍼灸治療は多くのツボを使えば良いとか、太い鍼で深く刺せば効くというわけではありません。

 

 

細かく言うと、
年齢や症状、皮膚の状態により、治療時間や鍼を接触させる距離を変え、
また鍼を皮膚に当てる角度や面積で刺激の量を調節します。
例えば生後3ヵ月なら、接触距離は1㎝くらいで、治療時間は30~60秒
1~3歳なら3㎝で2~3分というように。

症状が軽いうちに診せて頂ければ、基本的には治療期間も短くなりますが、
アトピー性皮膚炎や喘息で長い間苦しい思いをしてきている場合は、治療期間も長くなる可能性があります。

 
そして、小児鍼のもう一つの良さは親子関係を良好にするということ。
子供の夜泣きで親が慢性的な睡眠不足や肩こり、腰痛、食欲不振、便秘などを発症し、
精神的にまいってしまい、育児ノイローゼに陥り、ひいては子供を虐待する。
子供は子供で、母親の顔色をみて、ストレスを感じ、よけいに寝ない。
この負の連鎖により、親子ともに心身疲れ果ててしまいます
小児鍼は、虐待を予防して、親子関係を良好なものへ導く治療法だと思います。

 

 

治療のやり方だけ書くと簡単なように思えますが、
小児鍼はとても奥が深く、興味深い治療法です。
私はまだまだ勉強中ですが、小児鍼のおもしろさに惹かれています。
何より子供が元気になって、満面の笑みを見ることができるのが嬉しいし、
お母さんの眉間のシワが取れてくるのも、また嬉しいものです。

ある意味、お母さんにとっては美容鍼”とも言えるでしょうか。

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