妊娠してからも鍼灸は大事

鍼灸治療を受けていた不妊症患者さんがめでたく妊娠して…
「よし、妊娠できたし、もう鍼灸治療はやめていいか!」と考えるなら、それは勿体ない話です。妊娠することも大事ですが、そこで満足してはいけません。無事に出産することがゴールです。
現在当院にも子供が授かりにくかった経験を乗り越え、今は妊婦さんとして毎日頑張っている患者さんがおられます。

 

東洋医学では気・血・水が充実し、バランスが整っているとき、人の身体は正常に働き病気にならないと考えます。それは妊婦さんでも一緒です。なんらかの原因で、気血が不足したり、滞ったり、バランスの乱れが病気を招きます。
妊娠・出産に特に大事とされるのが五臓(肝、心、脾、肺、腎)のうち腎・脾・肝といわれ、なかでも身体そのものが持っている元気の源は「腎」にあると考えます。その「腎」の気を消耗させないことが、出産する母親にとっても、出てくる胎児にとっても大事なポイントになっていきます。
よく患者さんに腎や肝という言葉を使うと、「腎臓ですか?肝臓が弱っているってこと?」と聞かれます。東洋医学で五臓というと、西洋医学のように臓器そのものを指すのではなく、その機能も一緒に捉えて考えます。例えば腎でいうと、水分の代謝を調節する、肺が吸い込んだ気を収めることができない(呼吸の問題)、耳や生殖器と関わっているので耳鳴りや難聴、尿失禁がおこる、など皆さんの考える腎臓のイメージとは少し違うと思います。ちなみに「髪」とも関係していると考え、若いころから白髪が目立つ人は、早くから苦労して腎気を消耗しているなどと言われます(東洋医学では)

話しを戻しますが、妊婦さんには生命パワーの源である腎気が必要です。それは、胎児の成長や発育にも腎気が関係しているからです。妊娠したときから、腎は働きっぱなしなので、疲れない・冷やさないなど日々の生活に注意して、出産まで腎を守ってあげましょう。
もちろん休みたくても休めない人もいますし、二人目を妊娠している人は一人目の育児に追われクっタクタに疲れている人もよく見ます。ですので、せめて「冷やさない」ようにしていただけると、腎気を貯蓄できます。

 

多くの妊婦さんは妊娠することで基礎代謝量が上がり、出産前には2割程度高くなるようです。そのため、以前は冷え症であった妊婦さんも冷えを感じにくくなっていますが、実際に触ってみると、ふくらはぎからつま先、腰やお尻が冷えている方が結構みられます。お腹の張りを訴える方は、お腹が冷えている気がします。
身体を温めると気血の流れがスムーズになり、お産の進行によい影響を及ぼします。胎児は頭で産道を押しながら、広げ伸ばし、降りてきます。母体の血流を良くし、産道を温か伸びやすくしておけば、子宮筋も疲労せず、母親も赤ちゃんも疲れずに済むと考えることができます。

 

出てきた赤ちゃんも「いや~思ったより楽やったわ~」と喜んでくれると、私は信じています。
妊娠後に鍼灸治療をすることで、流産の予防、つわりの軽減、逆子治療などなど、さまざまな良い効果が望めます。また、そのうち少しずつ書いていく予定です。

このページのトップへ戻る